運営後記

運営後記

2015年2月25日:大会実行委員長 広江淳良
2014年11月27日:コースプランナー 加藤弘之
2014年11月26日:地図調査・作成 西村徳真 (NishiPRO)
2014年11月26日:アシスタント・コントローラ 中村弘太郎
2014年11月26日:パトロール 柳澤貴
2014年11月26日:競技責任者 桜井剛
 

大会実行委員長 広江淳良

伊豆大島でオリエンテーリング大会を開催するのはES関東Cにとって長年の夢でした。折しも伊豆大島ジオパークで国土交通省による観光資源の情報発信に関するプロジェクトがあり、ES関東Cクラブ員の一人が担当官であったために地元とつながりができたというのが、夢の実現に向けてのスタートとなりました。
私が地元に挨拶するために最初に伊豆大島を訪問したのは2012年12月13日でした。大島観光協会事務所で企画を説明するや、会長が大島町役場、大島支庁と私を紹介して回ってくださり、帰りがけに竹芝の東海汽船の本社に寄れるようアポまで取ってくださりました。地元の期待は大きいようでした。
 一番大きな問題は、伊豆大島が国立公園であり、裏砂漠一帯は特別保護地区および特別地域という自然保護のための国の規制がかかったエリアだということです。伊豆大島には環境省の自然保護官が常駐しています。以前に裏砂漠でトレイルランの大会を企画したところ、許可がおりなかった事例もあったそうです。国と都から権限を委譲されて実際の管理業務を実施しているのは大島支庁土木課ですが、どうすれば許可が得られるか、ずいぶんアドバイスをいただきました。
 観光振興に係わる方だけでなく、自然保護に係わる役場の方々にもオリエンテーリングを正しく理解していただけたことで、一気に加速がかかりました。
 大会の開催日程については他のイベントとの調整もあり、2013年開催の計画だったのが一年延びました。その間、大会の1年前にあたる2013年10月に伊豆大島で台風26号による土石流が発生し、甚大な被害を受けました。大会開催が危ぶまれた瞬間です。幸いにして裏砂漠一帯は地形に影響がなく、また逆に伊豆大島の地元からイベントへの期待が高まったように思います。
 正直なところ、地元はオリエンテーリング大会の企画に対して半信半疑だったようです。「本当に数百人の参加者が来るようなイベントが開催できるのか?通常、何か大きなイベントを開催するときは、地元にボランティアの動員とか寄付とかの依頼があるはずだが、それがいつになってもこない。しかし船や宿の予約はどんどん入ってくる。大丈夫なのか?混乱はないのか。。。」伊豆大島で何かイベントをやるときのキャパシティーは200~250人くらいまでなのだそうです。今回は450人も島に人がやってきて、しかも地元民でない30人程度の人手で滞りなく大会が終わってしまった。信じられないことだ、と感嘆されました。
実際には、大島観光協会からはお手伝い要員を出していただいたり、宿泊助成金申請の臨時デスクを設置してもらったりしました。大島町役場からはテントやコーンなど資材一式を貸していただきました。大島温泉ホテルからは、会場のみならずレンタカーも無料で提供いただきました。東海汽船には増発便や乗船割引を出してもらいましたし、東京本社から社員がやってきてお椀のサービスをふるまってくださいました。大島バスにもバスの運行に便宜をはかったもらいました。大島医療センターには怪我に備えてスタンバイしてもらっていました。地元の多大なご協力があって開催できたと感謝しています。
 伊豆大島裏砂漠・奥山砂漠はオリエンテーリング愛好者にとって大切な資源です。今後も地元振興と自然保護を両立させて、オリエンテーリングを楽しむことのできる関係を維持・発展させていきたいと考えています。
 
 

コースプランナー 加藤弘之

ジオパーク伊豆大島 オリエンテーリング大会にご参加いただいた皆様ありがとうございました。
 
 実に14年ぶりにフルカテゴリーの大会のコースプランナーを務めさせていただくことになりました。14年前に比べれば、オリエンテーリングの経験も増えて、さぞ楽に組めるかと思いきや、この日本有数の特殊なテレインでは、さらなる課題が待っていました。
 
 まず、頭を悩ませたのが、ウイニングタイムの予想です。通常であれば、おおよそのタイムを試走タイムから予想することができますが、ES関東Cのメンバーは大島に何度か来たことがあるヒトが多く、このテラインの走り方を知っている人が多くいました。そのためESメンバーのタイムを参考にしていいのか?それとも、初見のヒトはもっとミスをするのではないか?もっと短くしなければならないのではないか?常にそのことに不安を抱えていました。また、大島は霧が出ると視界が全く効かなくなり、非常に難易度が上がります。さらに日没時間が近いこともあり、参加者の安全を考えると短めにしておいた方がいいのではないか?でも、こんな平らで走りやすいテレイン、まともに走ったら、キロ7分とか出てしまうのではないか?そんな葛藤の中コースを組むこととなりました。
 前日の試走では、私M21Eで115分、その他にも多くの人がウイニング想定タイムを大きく超えている人が多くいたため、「長すぎたのではないか?」と後悔と、不安を抱えて当日を迎えました。
 当日、朝に、二日目のM21Eのコースを試走し、やはり、85分と、ウイニングタイムを大きく超えてゴールし、意気消沈して当日を迎えました。しかし、最初に会ったM50Aの参加者がウイニングを切るタイムでゴールしたことを聞き、ようやく一安心することができました。しかし、むしろ、その後、ウイニングを大きく切られ、逆に、男子の多くのクラスでは、コースが短すぎることとなりました。
想定よりも、大会当日は、①周囲に人がいることで走速度・ナビゲーションに大きな影響を与えたことや、②使う区画によって、難易度が大きく異なった。灌木林、東部の藪地帯、裏砂漠など。といったことが考えられました。一方女子クラスでは多くのクラスで、ウイニングタイムをオーバーしてしまいました。これについては、ESの女性試走者が、一人しかおらず、うまく設定できなかったことも原因として挙げられます。今回の結果を受け、次回以降はより適切なウイニングタイム設定ができるものと思います。
 
大会終了後、多くの人に「楽しかったよ!」と言っていただくことができました。しかし、それはほとんどテラインの特性によるものが大きく、やはり、このテラインで大会を開こうと、強い意志を持って準備を進められた主幹メンバーのたまものだと感じました。
自分自身もM21Eを二つ走って、昔北欧で感じた、「この直進を外したら死ぬ!」というスリル、ナビゲーションの楽しさを思い出すことができました。このテラインは、何度走っても楽しい、慣れればなれるほど楽しいテラインだと思います。次回以降の大会にも多くの参加を期待しております。
 
 

地図調査・作成 西村徳真 (NishiPRO)

楽しんでいただけましたでしょーか、伊豆大島。SNSざっと見る限りにおいては、かなり楽しんでいただけたようですね。お疲れ様でした。作品紹介を更新しました。
http://nishipro.com/map_detail.php?cid=33
今回の地図は、航空写真・航空レーザ、そしてGPSを今まで以上にフル活用させました。
最初に入った1年半前当時は、まだ航空レーザの最適な使い方を模索しているところで、航空写真もほとんど使ったことがありませんでした。しかし、とにかく調査が難しく、旧図に書かれていないヤブの固まりはたくさんあるし、予定のスピードが全然出ない!というところで、藁をもすがる思いでいろんなことを試したわけです。
まあ、このあたりは実に西村らしいと言いますか。
特に航空写真は最高に使い勝手がよく、場所によってはススキの群生地の形を見てドンピシャで現地を確定でき、大変重宝しました。
この地図作りは自分としてもかなり刺激的な経験でした。特徴物の「取捨選択」が激烈に難しい、なんて感覚は日本のテレインではそうそう味わえるものじゃないです。海外のマッパーがどんな世界で地図を作っているのか、そういうことにも思いを馳せることができました。
毎日マウンテンバイクで30分の悪路走行通勤から始まり、強風・日差し・急な雷雨のある中の調査は相当タフなものでしたが、携わらせてもらえて本当に良かったと思います。
 
 

アシスタント・コントローラ 中村弘太郎

今回はコントローラー補佐として、競技規則を遵守しているかのチェック役でした。
一番重要な仕事は、大会前日のコントロールのチェック。何しろ自然保護の観点から事前にテープ巻きができず、前日にフラッグを設置するため、かつあの難しいテレインですから、通常の大会よりミス設置のリスクは高いわけで。しかし熟練メンバー揃いのES関東Cでしたので、さすが優秀でした。
当日もスタート、フィニッシュの設営状況のチェックに始まり、競技の進行を見ていたので、お天気のよい中、樹木のないテレインに丸2日外にいたので日焼けしました…。
それにしても、西村くんはよく1人でこれだけの地図を作り上げたものです。相当大変だったと思います。せっかくのいいテレインに、いい地図なので、今後も選手強化合宿などで活用されるとよいですね。
運営のES関東Cのみなさんもお疲れ様でした。遠隔地ですので、苦労も多かったと思います。
個人的には、JOAの地図委員会の仕事でコントローラー講習会で講師をする機会があったのですが、大会で実践できたことはよい経験となりました。貴重な機会をいただいたES関東Cには感謝しております。
 
 

パトロール 柳澤貴

ES関東Cにより巧みに調理された島の魅力(毒)
 
日本列島そのものも島ではありますが、より小さい島には、その土地独特の自然、食、そして人の濃さ故の魅力が詰まっています。今回の大会の舞台である、伊豆大島も、他の島とくらべて遜色ない特徴を持った島でした。
アフリカには、不自由なことが沢山あるものの、一方で痺れるような喜びを感じることがあり、この喜びをくりかえし味わいたいと思いはじめた状態を、「アフリカの毒にあたった」と呼ぶそうです。
私自身、これまで伊豆大島にはウルトラマラソンや、観光+釣りなどでその魅力(毒)に引き込まれてきましたが、私自身の今大会のテーマは、参加者の皆さんに、ジオパークたる伊豆大島の大自然の魅力(毒)を味わってもらうことでした。
しかし、大会のテレインとなる三原山裏砂漠は、日本屈指の難度を持つ微地形に飛んだ場所であり、あたかもふぐのきものように、ただしい技術をもった調理師により料理されることで、はじめて大会参加の皆さんに、ぴりぴりした味わいを感じてもらうことが可能となります。地図、コース、設置などを含めた運営を一歩間違えば、参加者の皆さんに毒を味わってもらうことはおろか、悲惨なことになりかねません。
大会に向けた状況は理屈では分かっているものの、大会運営ではベテラン揃いのES関東Cを持ってしても今回の大会準備、運営はなかなかの難儀なものでしたが、結果的には、その難しさを運営者側として楽しむことができました。
まず、素材たるテレインの解体は、地図はプロマッパーの西村さんの調査で素晴らしい地図ができあがりましたが、最終的にどういう料理にするかというコースプランニングやコントロールの設定は、通常のテレインとは地形表現の難しさが段違いであることから、もっとも難しい部分であったと感じています。
参加された皆さんも感じられたように、裏砂漠のテレインの地形を2.5m感覚のコンタで全て余すことなく表現することはできません。また、現地と地図上での岩や岩石地の取捨選択などは悩ましい問題でした。
そんな中、試走や、コントロール位置、コースなどについての議論をクラブ内で繰り返し、最終的には、裏砂漠のテレイン、そしてできあがった地図の美味しい部分を使ったコース、コントロールでのナビゲーションを、参加者の皆さんには楽しんでもらえたのではないかと思います。
今回の大会では、私はテレイン作業がメインで、コントロール設置や給水所でのパトロールを担当しました。参加の皆さんが、時にはぴりぴりした裏砂漠の毒に痺れながら、オリエンテーリング、ナビゲーションを好天のもと、たっぷり楽しんでいるのを見るのは、運営者として大会準備の苦労が報われた瞬間でした。
参加の皆さんにおかれましては、オリエンテーリングに限らず、またこの伊豆大島の魅力(毒)を楽しみに、再訪いただければと思います。
私自身も、また違う伊豆大島の毒を楽しみに、別の競技で訪れてみたいと考えております。
最後に、遠方までご参加、ありがとうございました。
 
 

競技責任者 桜井剛

「伊豆大島ジオパーク」のオリエンテーリングを楽しんでいただけましたでしょうか?
 
西プロによる地図調査が終わったのは今年の1月でした。それから加藤弘之によるコースプランニングがされ、5月の連休に試走合宿を実施したのですが、順調に思えた競技運営がここで大きく見直しを迫られることになりました。
というのもまともに設置できずにミス設置が続出し、2時間越えやDISQばかりでまったく試走にならなかったのです。最高のテレインと最高の地図と最高のコースがあったとしてもミス設置があれば大会は台無しになってしまいます。
今回のテレインは特別保護地区ということもあってコントロール設置許可は前日からで、事前のテーピングもNGなのですが、この条件下で競技責任者としての最大の課題はミス設置をいかにしてゼロにするかでした。
 
とりあえずは設置場所を確認しなければと、10月初めに3人で2日間をかけてその作業を行うことにしたのですが、やはり難テレインです。作業は難航して数時間入って1人10箇所も確認できず、さらに2日目は台風通過前日ということもあってまったく作業ができませんでした。

霧のテレイン

霧のテレイン
 
1人での確認作業は危ういことを認識した私たちは、大会前日の設置メンバーが設置箇所を2人1組で確認して記憶するしかないとの結論に至りました。この作業を11月初めに行うことにしましたが、その日は生憎の雨でテレイン内には霧が立ち込めて50m先が見えない状況。それでも2人1組という作戦はうまくはまり、なんとか全コントロールの確認ができてようやくコース確定の目処がたちました。
しかし、結果としてこの日までの確認作業も3箇所間違っていたのですが・・・
 
前日の設置作業は2人1組で早朝から行いましたが、これまでの準備が功を奏したのでしょう、何とか午前中に終えることができました。
全設置箇所の確認については、コントローラの村越さんと中村さんにお任せすることにして、大半の役員によって全コースを試走しましたが試走メンバーからミス設置の報告がなかったのは難テレインだからでしょうか?村越さん、中村さんだからこそこの難テレイン内の多数のコントロール確認作業ができ、3箇所のミス設置の指摘ができたのかもしれません。本当に助かりました。
 
何はともあれ「ミス設置なし」で皆様にコースを提供するという責務をクリアできたのは、競技責任者の私にとって今大会で最も感慨深いことなのです。
 
確認作業ではことごとく天気に阻まれていたのですが、設置作業の前日から大会終了まで好天に恵まれたのは、運が良かったとしか言いようがありません。もし雨で霧がたちこめたら、まともに設置できるだろうか?果たして競技者の安全は保障できるのだろうか?未帰還者がでたら果たして対応できるだろうか?もちろん最悪の状況も想定はしていましたが、経験しなくて済んだのには助けられました。
 
参加していただいた皆様、協力していただいた観光協会をはじめとした伊豆大島の皆様、東海汽船の皆様、ありがとうございました。今回の運営での反省点も多くあります。反省を生かしてさらにグレードアップした次回の伊豆大島大会を楽しみにお待ちください。